Archleaf

風吹き渡るデッキの家

1999/京都市/鉄筋コンクリート造7階建て/1382u

この建築は京都市内の中心部に建っています。
ここには以前、古い町家が建っていました。
文化遺産ともいえる町家を解体して現代的な建築を造るという行為には覚悟が必要です。
何も好き好んで町家を壊す人は居ません。
先祖から受け継いだ土地を守るため苦渋の選択でした。少しでもこの場所のDNAを守りたいという想いから、現代の京都における集合住宅として、歴史に従属するのではなく、その正統な和の精神を受け継ぐデザインを心がけました。
ファサードのうちエントランス部分を町家のスケールに合わせました。いぶし銀のガルバリウム鋼板の板金加工で陰影の有るラインを繰り返し町家の瓦屋根に当たる部分を表現しました。ここで上階の住戸部分との見かけ上の境界としています。2層吹き抜けで細く高いエントランスの上部には松本正樹しによる畳2帖分の大きさのステンドグラスがはめ込まれています。エントランス前の外部床には町家の中の土間に使われていた御影石を再利用しています。他に代え難い趣が有ります。2階住戸のバルコニーはアルミの縦格子でデザインし、この階まではパブリックとしての外観を守るようにしています。
細く高いエントランスホールです。正面のエレベーターホールを介して1階奥の住戸まで路地のように細く長く続きます。壁は凹凸の有る窯変の黒褐色のb器質タイルで外部まで連続します。左奥に昔この場所に建っていた町家の8寸角の大黒柱をモニュメントとして建てました。今も心の拠り所としてこの建築を支え続けます。
最上階のオーナー宅の座敷です。
マンションの一室とは思えない落ち着きと風格が有ります。
襖を開け放てば、畳敷きの廊下と、奥の和室とが繋がり、京間18帖の広間となります。祇園祭の時などご親戚が一同に会せるような広さを確保しました。
奥の和室から雪見障子越しにバルコニーに設けた坪庭を見ます。ここが7階に在ることを忘れます。灯篭と手水鉢は昔の庭に有ったものです。